ドイツからこんにちは。

ドイツの日常で見たこと、聞いたこと、思ったことを気ままに

ドイツで出産 ー無痛分娩ー

出産予定日にバルーンを入れて管理入院。その翌日から二日間陣痛促進剤を飲んだ後の続きです。

 

22時にベッドに横になったものの、なかなか寝つけません。

何故だか寝苦しい。

なかなか眠れず横になっているうち、お腹が痛いかもしれないと思い始めました。

1時間くらいそうして眠れずもがいてから、試しに痛みの間隔を測ってみました。

すると、どうもお腹の痛みは2、3分間隔で来て、痛みは1分ほど続いているようでした。

ん?これが陣痛ってやつか?

前日に「そんなの普通のことよ」と呆気なく助産師さんに言い放たれた記憶があるので、これが陣痛なのかいまいち確信が持てません。

 

痛みの間隔を計測し始めてから30分ほど経ったあたりで、風船のようなものがパツーンと下腹で割れたような感覚がありました。

最初、おならしたかな?と思いました。

おならだったら、またこんな感覚があるかもしれない、と思ってしばらく待ってみたものの、ありません。

おならではなかったか。

ってことは、これが破水っていうやつなのかな。

この頃になるともうお腹の痛さがはっきりしてきて寝付けず。破水もしたようなので、24時になって看護師さんを呼びました。

看護師さんに分娩室に行くよう指示され、向かう途中で夫にメッセージ。

「陣痛がきたっぽい。破水もしたっぽい」と。

破水と聞き、

「もう産まれるじゃん!もう病院行った方が良い?」と慌てる夫。

「いや、まだ良い。タイミングになったら連絡する」と返信。

 

分娩室に着いたらまずCTG測定(胎児の心拍測定)。

測定中もお腹が痛く、苦しい。

測定後に見てもらうと、子宮口の開きは2cm。

子宮口全開は10cm。

全開にならないと、いきみを開始して赤子に出てきてもらうことができません。

愕然。こんなに痛いのにまだ2cmだなんて。

初産の妊婦は子宮口1cm開くのに大体1時間かかるらしいので、あと8cm、8時間。

無理、8時間も身体持たない 。゚(゚´Д`゚)゚。

 

愕然としていた私に助産師さんは痛み止めの点滴を打ってくれました。

点滴中ふと携帯を見ると、夫からのメッセージが。

「病院に着いた」と。

あれ?まだだって言ったのに。

痛み止めが全身に回って15-20分後には効いてくるという助産師さんの言葉を信じて、夫と廊下のベンチに座って話して痛みが和らぐのを待ちました。が、一向に痛みはなくなりません。腰掛けて話をするのも辛くなってきたので病室に戻ることにしました。

苦しんでいる私を残して帰るのに後ろ髪引かれている夫。

後ろを見る余裕もなく、看護師さんに支えてもらいながらよろよろ歩く私。

病室に戻ると、同室者が心配して励ましてくれました。

「私は子宮口3cmから4cm開くのに1時間かかったけど、4cm開いてからはあっという間だったよ」

と。かすかな希望。私もそうであって欲しい。

ベッドに横になって痛み止めが効くのをひたすら待ちましたが、1時間経っても効きません。

もうダメ。もう一度痛み止めを打ってもらう。

分娩室に行き、先ほど痛み止めを打ってくれた助産師さんに、

「痛み止めが効きません」と言うと、

「効かなかった?痛みが強くなったんじゃなくて?」と聞かれました。

痛みが強くなったかどうかは分からないけど、痛み止めの効果ははなから感じられなかったけどなと思っていると、

「まずはCTG」と。

えー!?この期に及んで、CTG?!

痛いよ、すぐに痛み止め打ってー。と心の中で叫ぶも、そんなわけにはいかず、CTG測定。

測定が始まってから助産師さん、「もし希望するならPDA(無痛分娩)もできるよ」と。

願ってもない提案。

「はい、ぜひお願いします」

飛びつきました。

陣痛できつい中の同意書記入には時間がかかりました。

事前に同意書をもらって読んでおいてよかったです。

測定後に子宮口の開きを見てもらうと、8−9cm。

やったー!同室者の言う通り、1時間でかなり進んだ!⸜(*ˊᗜˋ*)⸝

あと少し。それも麻酔を打ってもらうから、楽になる。

 

助産師さんが分娩室の準備に行かれた時に、夫に電話。

夜中の3時20分。

プルー、プルー。

でろー。これで出なかったら恨むぞ!

と思った所で、寝起きの夫が出てくれました。

陣痛で苦しい中、かろうじて発した一言、「Komm(コム。来て)」。

それですぐに理解してくれた夫、「向かうよ」。

 

3時25分、分娩室に移動。

助産師さんが、今から麻酔科医を呼ぶね、と。

えー、今?! 先に電話してくれてても良かったじゃん?! (;Д;)

陣痛がきつ過ぎて、ちょっとの待ち時間でも長く感じられました。

麻酔科医が来てからいくつか問診がありました。

それ問診票に書いたんで、いいから早く麻酔入れてー。って心の叫び。

「妊娠中に何か問題はありましたか?」

と聞かれた時、ちょうど陣痛の波が来ている時で、口を開けませんでした。

すると、代わりに助産師さんが「妊娠糖尿病」としれっと答えてくれました。

続けて「それ以外何かあったら、自分で言ってね」と。

陣痛で苦しかったけど、思わず笑えました。

 

そんなこんなでようやく麻酔。

陣痛がきたら休憩するから言ってね、と言われましたが、

幸い麻酔を入れられている時に陣痛はきませんでした。

何故だか麻酔を入れてもらっている間、脚がガクガク震えました。

私、びびってんのかな、と思いましたが、助産師さん曰く、それは薬が効いている証拠だ、とのこと。

本当にそうなのか、優しさからの励ましなのかは分からないですが、麻酔無事終了。

痛みがいっぺんでなくなりました。

驚異の効果。

 

麻酔のおかげで安らいだ所で、夫到着。4:10頃でした。

「束の間の休憩を楽しんでね」と言って、助産師さんが私達だけを残してどこかに行ってしまいました。

夫は当然のごとく眠そうだったので、側に座って寝てもらい、私も少しうとうとしました。

少し前に陣痛で悶えていた時と打って変わって分娩前にこんなに平穏に過ごせるなんて、無痛、最高。

 

4:50頃に助産師さんがいらして子宮口の開きを確認。8−9cm。

麻酔を入れてから陣痛がなくなって、子宮口の開きも止まってしまったようでした。

そのため陣痛を起こす点滴を打たれました。

陣痛はくるけど痛みはしない、と説明されましたが、陣痛も痛みも何も感じませんでした。

 

そうこうするうちに、シフト交代。

早番の女医さんが来て、どんな感じか聞かれました。

「陣痛は感じません。お尻に何かある感じはします」

と答えると、

「それが頭よ」

と。

続いて早番の助産師さんが来て、同じ質問。同じ回答。

「それが頭よ」

と、これまた同じ反応。

そうなのかな。

そんな受け答えをしているしている間にも私のお腹はぐーぐーなるなる。

助産師さんが気遣って、朝食を食べるか聞いてくれました。

お願いすると、朝食と温かいお茶まで持ってきてくれました。

至れり尽くせり。

朝食を食べている間も夫は横で寝ていました。

6時頃のことでした。

 

この時で子宮口の開きがどれくらいだったか覚えていないのですが、多分全開になっていたのではないかと思います。

朝食を済ませてから助産師さんが、陣痛がきていきみたかったらいきんでね、というようなことを言われたので。

ただそう言われたものの、陣痛はきません。私が感じるのは便意だけ。

陣痛を起こす薬をさらに入れてもらったものの、陣痛はきません。

このまま待っていても陣痛を感じないだろうなと思い、試しにちょっと踏ん張ってみました。

助産師さんが、「上手、上手」と褒めてくださったので、どうやらこれで良いらしいということがわかりました。

7時頃のことでした。

陣痛の波と一緒にいきんで、と言われるものの、陣痛の波を感じれないのでいきみ時が分かりません。

そして麻酔の効きが良過ぎて下腹に感覚がないので、どこに力をかければいいのかも分かりません。

CTGは胎児の心拍数だけじゃなくて、子宮の収縮も測定していて陣痛の波が分かる(ということをこの時知った)ので、CTGのモニターを見ている夫に、今じゃないよ、と教えてもらうほど、適当にいきんでいた私。

そんな感じで四苦八苦している私を察してか、助産師さんが提案。

「Hocker(ホッカー。風呂場の腰掛け椅子みたいなの)試してみる?」と。

試してみたら、これが私には合っていました。

力をかける場所は、これまでの記憶と経験を総動員して、いつもトイレでしている感じを思い出し。

いきみ時は、CTGのモニターに映し出される陣痛の波に合わせて。

私の友人は5いきみくらいで赤子が出てきたと言っていたので、私もふん、ふん、くらいで産めるかと思っていましたが、さすがにそんなにすぐには出てきませんでした。

それでも踏ん張るたびに助産師さんが、「上手。すごく上手」とものすごく褒めて下さったので、このやり方で間違っていないんだと思えました。

何よりCTGを見て、胎児の心拍数が上がりも下りもせず安定していたので、赤ちゃんが平気なら私はこの調子でやっていけばいいんだと落ち着いていられました。

そうして何度か踏ん張ったら頭が出てきて、再度踏ん張ったら、肩から下の部分がニョロっと一気に出てきました。

9時5分。

産まれました。

 

臍の緒は夫が切断。

ちょっと緊張していたようです。

 

赤ちゃんを肌に直に置くカンガルーケアをしたいか助産師さんに聞かれて、「はい」と答えると、

軽く血を拭いて渡してくれました。

 

母乳育児をするつもりか聞かれて、これも「はい」と答えると、

助産師さんが赤子の口を胸に持ってきてくれました。

産まれたばかりなのに、意外としっかり咥えるもんだな、と思っていたら、

これまた助産師さん、「手伝っていないのに咥えた。良いね」と褒めてくれました。

まだ母乳は出ていなかったと思うけど、必死で吸い付く赤子の姿は可愛かったです。

 

女医さんが裂傷処置をしてくれている時、何だか力が抜けた気がしました。

傍にいた夫に「何だか力がない気がする」と言うと、

夫「それはそうでしょう、大仕事をしたんだから」と。

それを聞いていた女医さんが「めまい?」と尋ねた時に吐き気を感じ、

「吐き気」と返答。

女医さんに指示されて、夫がヘルプ紐を引っ張ると、どこかにいっていた助産師さんがすぐに戻ってきました。

「吐くならここに」と袋を持ってきてくれたものの間に合わず。

お腹にあったものを全て出してしまいました。

汚してしまったところを一旦綺麗にするため、赤子は移動。

その間夫がカンガルーケアをしました。

赤子は夫の胸に吸い付いて、

「僕のを吸っても何も出てこないんだけどなあ(*ˊᵕˋ*)」

と夫はちょっと嬉しそう。

そんな様子を見て、皆んなちょっと和みました。

 

何かの測定とビタミンKの経口投与があったので、助産師さんが赤子を連れていきました。

どんなことをするのか見ようと、首を左に向けて上半身を少し持ち上げたところ、ふと、力が入らないような、気持ちが悪いような感じがしました。

夫の顔が見えたので、調子が悪いことを伝えようとした所で、意識がなくなりました。

目を開けると私は数名のスタッフに囲まれていました。

助産師さんに「私たちのこと分かる?」とのぞきこんで声をかけられています。

一体どういうことなんだろう。助産師さんの声は聞こえるし、分かるけど、なんで私の脚持ち上げられているんだろう。とりあえずお腹が空いているから伝えよう。でもHunger(フンガー。空腹)とだけ言うのも幼稚な言い方だよなあ。いや、まずは分かりますって返事すべきかな。んー、そもそも、口が重くて声を出すのが面倒だな。

などと考えて反応しないでいると、

別の方が、「彼女分かっていない」と言って出ていこうとしました。さらにヘルプを呼ぶつもりだったのでしょうか。

いけない。聞こえているっていう意思表示をしなくちゃ。そこでようやく口を開きました。

「思うに、私エネルギー源が必要です。」

点滴を受けつつ、血圧や血糖値測定、縫合箇所の失血確認などをされている間にようやく状況が理解できてきました。

分娩前に食べた朝食まで全て吐いてしまったせいで極限にお腹が空いて低血糖状態に陥ってしまい、意識を失ってしまったんだ、と。

点滴と口に入れてもらったブドウ糖タブレットのおかげで大分回復。

分娩室まで病室のベッドを持ってきてくださり、そこに乗り移してもらって、寝転がったまま病室に戻りました。

赤子は私の後からやってきました。

11時15分頃。

母子共に病室に到着。

赤子が出てきてから2時間ほど経っていました。

 

いやはや、赤子が産まれた後に少しトラブルがありましたが、

母子共に無事に出産を終えることができて本当に良かったです。

 

Hocker(ホッカー)のイメージ図。