ドイツからこんにちは。

ドイツの日常で見たこと、聞いたこと、思ったことを気ままに

陣痛カクテル

出産を終えて病室に戻り、朝ご飯を平らげて家族親戚友人への報告を済ませ、昼ご飯を少し口にして一息ついてから、ようやく少し寝るために目をつぶりました。

 

うとうとする中で、新しい同室者が入院してくる音が聞こえました。赤ちゃんはいないので、彼女も管理入院なのだろうと思いました。陣痛で苦しい時に励ましてくれた同室者は、私が病室に戻ってきた時に退院していきました。

 

起きてから新しい同室者と話をすると、彼女は三人目を妊娠中で誘発分娩のために入院したということでした。ただ彼女は経産婦なので私とは違ってバルーンではなく、陣痛カクテル(Wehencocktail。ヴェーヘンコックテール)を飲んだということでした。出産準備コースを受けた時に、予定日を過ぎても陣痛がこない場合は陣痛カクテルを試すと良いとは聞いていましたが、全く効果を信じていなかったので、病院でそんな民間療法的な方法が取られるんだということに驚きました。彼女もそう思っているようでした。

これで陣痛がこなければ彼女も明日から陣痛促進剤の錠剤を飲んでいくことになるということで、私の話を聞いて、長丁場になりそうだと想像しうんざりした顔をしていました。家に娘さんが二人いるので早く戻りたいようでした。

 

21時頃にシフト交代のタイミングで夜勤の看護師さんが様子伺いに来ました。同室者は?と彼女の居場所を聞かれたのですが、分かりません。彼女は19時にCTG(胎児の心拍数と子宮収縮測定)に行ってから戻ってきていませんでした。散歩に行ったのかな、三人目の出産ともなると余裕があるもんだな、くらいに考えて特に気にしていませんでした。看護師さんは引き継ぎメモを見て、「どこかに行ってるだけね」と言ったので、私は「ハイ」とだけ答えました。

 

その時です。

病室のドアが開きました。

見ると同室者が車椅子に乗っています。

え?車椅子?

と思うと同時に、彼女の後に赤ちゃんの乗ったベッドを押す別の看護師さんの姿が見えました。

 

えー!?

何?!

どこかほっつき歩いてると思ってたけど、産んでたの?!

 

彼女曰く、19時にCTG測定に行った時には陣痛を感じなかったものの、少し子宮収縮が見られたそうです。経産婦ということを考慮して助産師さんに念のため分娩室にいくよう言われた彼女。陣痛きてないのにな、と渋々分娩室に移ったら陣痛がきて、あっという間に出産に至ったそうです。

凄い。

経産婦はお産の進むのが早いとは聞いていたけど、こんなに早いとは。どこかをぶらついていると思っている間に産んじゃったよ。

 

あまりの展開の早さに私も彼女も看護師さんも笑ってしまいました。

 

日本にはオロナミンCを飲むと陣痛がくるというようなジンクスがありますが、陣痛カクテルもそういうジンクス的なものだと思っていました。

だけどジンクスじゃありませんでした。ちゃんと効き目ありました。私が見た症例1例だけですが。

彼女が飲んだそのもののレシピは分かりませんが、陣痛カクテルの材料はひまし油、あんずジュース、アルコール(スパークリングワインや蒸留酒など)。それにアーモンドペーストやバベンソウ(Eisenkraut。アイゼンクラウト)を入れることもあるそうです。ひまし油の成分のリシノール酸が小腸や子宮を刺激して、下剤として作用するだけでなく陣痛を起こす作用もあるそうです。

長引く予想から一転、陣痛カクテルの効果で、我が子と同じ日に産まれた赤ちゃんが新たに同室に来たのでした。

 

イメージ図